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登録日:2012/05/28(月) 01 30 07 更新日:2021/10/09 Sat 17 51 54 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 WS とあるの夏 とある科学の超電磁砲 ニセコイの冬 ヴァイスシュヴァルツ 「とあるの夏」とは、TCGヴァイスシュヴァルツ(以降WS)において、2011年に「とある科学の超電磁砲」(以降とある)のデッキが大流行した現象のこと。 これ以降WSプレイヤーの間では、ある特定のデッキが強かった時期のことを、「~の夏」「~の冬」と表現するようになった。 とりわけ有名なのが「とある」の流行した2011年前期の「とあるの夏」とニセコイの流行した2014年後期の「ニセコイの冬」である。 WSというゲームは運要素が非常に強いので、本来は作品ごとの差が出にくいゲームデザインなのだが、 この時期はぶっちぎりでこの2つの作品の使用率が高く、大会では右を見ても左を見ても「とある」、ニセコイばかりだった。 この2つの時期をWSの暗黒期と捉えるプレイヤーも多い。 命名の由来はMTGの「ネクロの夏」より。 とあるの夏 2011年2月、「とある」の追加エキスパンション「禁書目録Ⅱ 超電磁砲」が発売。「超能力デッキ」が大幅に強化された。 【強さの理由】 WSにおいて強いレベル3のキャラクターは以下の効果を持つカードである。 1.相手プレイヤーに直接ダメージを与える「バーン」を始めとして、「相手のクロックを増やす」(他ゲーでいうと相手のライフポイントを削る)能力。 代表例:「あなたは相手に1ダメージを与えてよい。」 2.自分のクロックを減らす「回復」能力。 代表例:「あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。」 RG/W13-052 カード名:一つ屋根の下 美琴&黒子 カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:10000 ソウル:2 特徴:《超能力》・《風紀委員》 【自】 このカードが手札から舞台に置かれた時か『 チェンジ 』で舞台に置かれた時、あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。 【自】[(1) 手札を1枚控え室に置く]このカードがアタックした時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、そのターン中、このカードのパワーを+2000し、このカードは次の能力を得る。「【自】このカードのバトル相手がリバースした時、あなたは相手に1ダメージを与えてよい。」 (ダメージキャンセルは発生する) 上記のレベル3キャラ・通称「屋根下」はこのカード1枚で上の2つの能力を両方とも持っていることがわかるだろう。 またWSにおいては前列に置くアタッカーとそれを支える後列のサポートカードによってゲームを進めることになる。 前列 移動を持つお姉さまへの憧れ 黒子、高パワーの常盤台のお嬢様 黒子、「屋根下」をサポートするパジャマの美琴 後列 高パワーを付与する“多才能力者”木山、生存力を上げる“冥土帰し” 「とある」では前列後列どちらも隙がないことからパワー・手札ともに申し分なく、ゲーム序盤から終盤まで相手を圧倒できた。 このように、優秀アタッカー・それを支えるサポート・強力なフィニッシャーと3拍子揃った非常に強力なデッキが「とある」であった。 【大規模大会での結果とその後】 上述の強さ、そして原作「とある科学の超電磁砲」の人気と相まって使用者は急増し、「とある」は大流行した。 地区大会32枠のうち、14枠が「とある」という結果となった。 全国大会決勝でも参加者30人中16人が「とある」を使用しており、 1〜4位全てが「とある」で占められてしまった。 この為、「“冥土帰し”」は2011/8/18 をもってタイトル限定構築で使用禁止。 「一つ屋根の下 美琴&黒子」も同じく2011/8/18 をもってタイトル限定構築で2枚制限となった。 その後も上記のキーカードは引き続きほとんどが制限指定されていき、「とある」は大幅に弱体化した。 (現在では制限緩和の実施・追加パックの発売によって、かつてほどの強さはないものの、ある程度の強さはある) これ以降はゼロの使い魔が流行した「ゼロ魔の夏」、Rewriteが流行した「Rewriteの夏(冬)」といわれる時期があった。 更に2014年前半期はこれまでのタイトルに対するメタカードを多く取り揃えた艦これが原作人気と相まって流行し、「艦これの夏」といわれた。 それでも大規模大会ではメタを読んだ別のタイトルが入賞することもあり、長らく一強といえるほど弱点のないタイトルは現れなかった。 しかしブシロード内でこれまでWSの担当であったプロデューサーが別の人物にWS担当を交代した後のことである。 その事件は起こった。 ニセコイの冬 2014年8月に発売されたブースターパック「ニセコイ」。その内容に多くのWSプレイヤーが驚愕した。 【流行の理由】 NK/W30-052 カード名:乙女心 万里花 カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:10000 ソウル:1 特徴:《警察》・《鍵》 【自】記憶 このカードがアタックした時、あなたの思い出置場の「約束のペンダント」が2枚以上なら、あなたは相手に1ダメージを与えてよい。(ダメージキャンセルは発生する) 【自】[(2) 手札を3枚控え室に置く] この能力は1ターンにつき1回まで発動する。このカードのバトル相手がリバースした時、他のあなたの《鍵》のキャラが2枚以上なら、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、このカードをスタンドする。 それでは楽様!また明日学校で!ごきげんよう!! 発売前に情報が出回ったころからすでに「屋根下よりやばい」といわれていたカード。 上述の「屋根下」をバーンに特化させたようなデザインとなっている。 前半のテキストによって「約束のペンダント」があればアタックの度にバーンダメージが発生する。 これだけならまだ何とかなったかもしれないのだが、取り返しのつかないことにこのカードは再スタンド、すなわちWSでは2回攻撃能力を持ち合わせている。 上記の通りバーンダメージはアタックの度に発生するので、このカード1枚で2回バーンダメージの撃てる恐ろしいカードになってしまった。 もちろんこれはあくまで1枚の話なので、当然同名カードを複数並べればその度にダメージはものすごいスピードで増えていく。 この「乙女心 万里花」を利用した戦法は通称「マリオカート」とよばれ、 相手の場に「乙女心 万里花」が並ぶ状況になろうものなら死を覚悟するしかなかった。 フレイバーテキストはもはや相手プレイヤーに別れを告げているようにしか思えない・・・ 一応「約束のペンダント」がないと発動しない、という条件がついていたのだが、 効果によって「約束のペンダント」を回収でき、上記の万里花を強力にサポートするニタモノ 楽 が収録されたのでほとんど有名無実な条件になってしまった。 当然シングル価格もすさまじい事になり、「乙女心 万里花」がWS史上でも稀に見る高額カードとなったのは言うまでもないだろう。 話はこれでは終わらず、ニセコイのブースターにはこれ以外にも キャラを道連れにしつつ手札交換のできる首をかしげる万里花 ほぼノーコストで回収効果を発動できる修羅場な万里花 限定的な移動効果に加えて道連れ効果を持つ意外な一面 千棘 など、これまでWSではこれまでほとんど存在しなかった「上位互換」に近い効果を持った狂っているとしか思えないデザインのカードが複数存在した。 ちなみに見て分かる通り千葉県のYさんに配慮したのか全体的にやたら万里花が優遇されたブースターだった。 【大規模大会での結果】 上記の通りこれまで考えられないほどの効果を持つカードが複数登場し、 「ニセコイにワンチャンあるのはニセコイだけ」「ニセコイシュヴァルツ」といわれるほどの崩壊したゲームバランスになってしまった。 発売後の大規模大会ではベスト8入賞者32人中27名がニセコイを使用。 特に仙台大会ではベスト8全員がニセコイ(入賞率100%)という「とあるの夏」がまだマシに見えるほどの悲惨な状況に。 あまりの惨状に例年なら大会の結果を逐一レポートするはずの公式twitterも結果を伝えなくなり完全に沈黙してしまう。 このまま世界大会が行われればとあるの夏をこえる惨事になるのは誰の目にも明らかだった。 【その後】 結果として例年なら大会後に行うはずの制限改訂を12月の世界大会直前に緊急改訂するという異例の事態となった。 (当然これには「最後だけ(世界大会の結果だけ)強引に取り繕っても意味が無い」との批判の声も上がった。) こうして発表された改訂では、ニタモノ 楽を「約束のペンダント」と同時に採用することができなくなり実質的に禁止指定。 乙女心 万里花も発売からわずか4ヶ月で制限入りという「屋根下」を上回るスピードでの1枚制限入りとなった。 ちなみに千葉県のYさんに配慮したのか発売から制限になるまでの期間があまりにも短かったという理由で、 デッキに投入するカードのカード名がすべて「万里花」なら「乙女心 万里花」を4枚まで投入できるという特例ルールがあった。 現在では廃止されている。 「乙女心 万里花」は1枚制限になったとはいえ手札に持ってくる手段はいくらでもあるので、現在でも要注意カードの一つであることには変わりない。 それでも複数並べることもできなくなり、バーンの条件も満たすのが難しくなったので、他のデッキで全く太刀打ち出来ないほどのタイトルではなくなった。結果的には良改訂だったといえるだろう。 カードゲームにおいてインフレはつきものの現象であるとはいえ、この時期のインフレスピードは明らかに異常であり、 交代後の担当プロデューサーの責任を問う声は大きい。 この記事がこれ以上書き加えられないことを切に願う。 【余談】 後に英語版でもニセコイのブースターが発売されたのだが…… 上記の「乙女心 万里花」を始めとして複数のカードが収録されず、大幅に弱体化した別のカードに差し替えられている。 公式からもやはりこのブースターのカードデザインに大きな失敗があったことが認められたとも言える。 追記・修正は環境を席巻してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ニセコイ追加ブースター来るとかいったいどうなってしまうんだ -- 名無しさん (2015-07-04 07 33 14) とあるはミルキィにどこかしらで勝てることが環境のボーダーラインだった時代の悲劇だな……今じゃ見る影もないけど。 -- 名無しさん (2015-08-24 20 31 02) ニセコイは出る前からヤバいと言われてたが実際ヤバかったもんな……本当にデザイナーが無能過ぎるわ。 -- 名無しさん (2015-10-23 22 31 39) 今のバランスはまあまあ…かなあ… アイマスというかデレマスがめっちゃ強いくらい? -- 名無しさん (2016-08-15 09 06 43) 艦これニセコイ前のWSは回復規制もあってカードパワーがかなりデフレ気味で、目ぼしい能力もなくブースターもしょっちゅう売れ残る割と危機的な状況だった それを思えば多少のインフレは仕方ないものだったのかもな…それにしてもニセコイはひどすぎた -- 名無しさん (2017-07-11 20 52 41) 名前 コメント
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楽園の神武姫ブリュンヒルデ No.4716 レア度 7 レベル 1 最大Lv99 スキル ヴァルキリーストライク 進化素材 コスト 20 HP 1,334 3,101 ターン(最短) 20(15) タイプ 攻撃/神 攻撃力 1,087 2,283 Lスキル 生誕のルーン 主属性 木 回復力 24 50 進化元 なし 編集 副属性 光 EXP 500万 5,000,000 進化先 なし 覚醒 スキルブースト / スキルブースト / スキル封印耐性 / 2体攻撃 / 2体攻撃 / 2体攻撃 / 暗闇耐性 / お邪魔耐性 / 毒耐性
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『忍風Project』や『W.A.T.C.H~ウォッチ~』等、フリーゲームを数多く製作している亜乱田堂氏によるコンプゲー。 老若男女、国籍、職業、種族問わず多彩なオリジナルキャラクターが参戦している。 作中の時代設定については、自立型ロボットや巨大ロボットが登場している事から近未来以降ではないかと思われるが、 第2次世界大戦時に運用されていた戦闘機のパイロットが20歳という設定も見られるため曖昧な模様。 あるいはサザエさん時空か? ボイスや効果音はフリー素材。 ゲームオーバーになった時に、『ストリートファイターII』の負けた時のような顔グラも実装されている。 また、全員がミッドナイトブリスに対応しているという徹底ぶり。 ポートレイトにはドット絵を用いているため、I.K.E.M.E.Nではキャラプレビューがオリジナルカラーになる。 他にもWinMUGEN向けのサイズでI.K.E.M.E.Nではキャラサンプルとカラーリングが開発中のカラーになる「旧バージョン」と、 日本語版で使用されているハイレゾ向けで大き目の「ハイポトレ」が存在しており、公開先のロダでDLできる。 IX氏によるAIが公開されているキャラには、デフォルトで同AIが搭載されている。 公開先の「uploader.jp」の容量制限でリン・パントンが最後のキャラになる予定だったが、 容量無制限の「AK1 M.U.G.E.N. Community」において、ナタリー・フォン・ブリュンヒルデを皮切りに再び新キャラが追加されている。 また、本作に関する二次創作は自由との事。 キャラクター 順番は亜乱田堂氏のサイトにおける掲載順(中ボス、ラスボスを除く)。 また、キャラ単体で公開もされている。 ミスティ・ゲインズブール、シュミット・BF-400、ジェイソン・ケイジ、ラファエル・クリスティアーノ・ダ・シルヴァ、幸村隼人 アルバート・ディアス、尚龍、レニー・ルボン、エルコブラ、ブラディミル・パチェンコ、結蓮、カザーナ・サフロン ボギー・デ・クラウン、ロック・ストーン、チェリー・ミルク、エレン・ラ・サンタ・テレサ、ハン・スジョン ベルナルド・ウィーバー、デューク・ブライアント、リン・パントン、藤山、ゴルベダ・コアチャール、TP・アダムス 中ボス パメラ・アモンド、霧咲小梅、モハメッドIII世、ネビル・オドネル、ナタリー・フォン・ブリュンヒルデ、香桃美 ラスボス 闘神アストロセイバー
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「ぶっちゃけ最近暑くてたまんねぇ。もう夏真っ盛りって感じだな」 「そうっすね。さすがに支部内は冷房が入ってますからマシですけど」 ここは、昼間の風輪学園第159支部。ここに所属する風紀委員の面々は、比較的高レベルの能力者が揃っている。 「そりゃあもう夏なんだし、当たり前じゃない」 「それだけならまだ耐えられるんだが、最近はぶっちゃけストレス溜まりまくりだからなあ」 「ストレス?あなたが?」 「そうだよ。学内で騒動が起きるわ、破輩先輩から蹴りを喰らうわ、おまけにリンちゃんに首を絞められるわで散々だっつーの」 「あ、あれはあなたが悪いんでしょうが!!このエロ鉄枷!!」 「ブッ!!ば、馬鹿言ってんじゃねぇ。だれがお前のカラダなんかに興味があるかってんだ!!」 「な、何を~!」 「鉄枷先輩!リンリンさん!落ち着いて!!」 「・・・・・・っていうか、“リンちゃん”とか“リンリン”ってもう決まっちゃったの?私の愛称として」 「「もちろん!」」 「ぐうううぅぅ!!あんのバカ界刺!余計なことを。今度会ったら一発ブン殴らないと気が済まないわ」 彼等159支部の面々は、現在風輪学園内で起きているある騒動の対処に全力を注いでいた。 そのため、普通ならほとんどのメンバーが巡回に出ている筈なのだが、今日は巡回等で知り得た情報の精査のため、 何人かの風紀委員メンバーが事務作業に集中していたのである。この話の顛末はまた別に語られることであろう。 今支部内にいるのは4人。鉄枷、湖后腹、一厘、そして・・・ 「フア~ッ」 「あれ?春咲先輩、どうしたんすか?そんな大きい欠伸をして」 「あっ。・・・ごめんなさい」 「い、いや、別に謝る程のことじゃ無いっすよ。さ、最近は熱帯夜も続いていますし。なあ、湖后腹?」 「そうっすね。俺も時々寝苦しくて夜中に目が覚めることもありますし」 「・・・ありがとう、鉄枷君、湖后腹君。ちょっと寝不足で」 「や、やっぱり!ぶっちゃけ俺の観察眼も捨てたモンじゃ無いな。ハハハ!」 「(春咲先輩・・・)」 1人で勝手に上機嫌になる鉄枷を尻目に、一厘は春咲の体を心配していた。 「(やっぱり、風紀委員と救済委員の掛け持ちは体力的にキツそう・・・。目の下にクマができてるみたいだし。でも・・・)」 注意深く観察すればわかる。春咲の顔がやつれているのを。化粧で隠しているようだが、同じ女性の一厘の目は誤魔化されない。 「(表情は明るくなった。公園で見たあの切羽詰った顔に比べたら格段に。・・・やっぱりあの人のおかげなのかな・・・)」 鉄枷や湖后腹と会話する春咲の表情は、意外にも弾んでいた。普段は余り饒舌では無いあの春咲がである。 その変化に一厘は安堵すると同時に悔しさも滲ませていた。 「(・・・悔しいなあ。本っ当に悔しい・・・。こうなったら・・・)」 「ん?何ボーっとしてんだ、リンリン?」 「ゴメン。ちょっと巡回に行って来る。私の分まで事務作業頑張ってねぇ」 「はあ?何勝手なことを・・・」 「それじゃあ~」 「おい、こら!!」 鉄枷の制止も振り切り、一厘は支部を後にする。そんな一厘の行動を怪訝に思う3人であったが・・・ 「よお!事務作業頑張ってるか!!」 「破輩先輩!巡回終わったんすか!?」 そこに159支部のリーダーである破輩が巡回から戻って来た。破輩は帰って来て早々に、冷蔵庫から飲料水を取り出し、中身を喉へ送って行く。 「今日も暑い、暑い。こりゃあリンちゃん当りに巡回を代わってもらった方がよかったな」 「・・・リンリンさんなら今さっき巡回に出ましたよ。当番じゃ無いにも関わらず」 「何!?ったく巡回するつもりがあるなら、初めから言っとけっつーの。疲れがドーっと出てきたわ」 湖后腹の言葉を聞いて一気に脱力する破輩。思わず備え付けのベンチに腰を下ろす。 「佐野はまだ巡回中か・・・。リンちゃんはいないが・・・まあいい。お前等、ちょっと集まれ」 「えっ?」 「何すか?」 「ぶっちゃけいい話っすか?それとも悪い話っすか?」 破輩の号令を受けて集まる鉄枷、湖后腹、春咲の3人。破輩はポケットに入れていたあるチラシを取り出し、3人に見せる。 「実はな・・・。今回掛かり切りになっている件が終わったら、パーっと騒ぎたいと思ってな。この店に予約をしようと思うんだが」 「あ!俺、この店知っています。最近噂になっている焼肉屋『根焼』じゃないっすか!」 「おっ!さすがは湖后腹。よく知っているな。実は、この前のバイキングで一緒になった『シンボル』の不動に教えてもらってな」 そのチラシには『根焼』の名前と地図、そしてどこか怪しい風貌をしたサングラスの男がプリントされていた。・・・肝心の肉が写っていないが。 「おい、湖后腹。ぶっちゃけこの『根焼』ってトコの肉って旨いのかよ?」 「俺は食べに行ったことはないっすけど、巷じゃ旨いって評判になってますよ、ここ」 「へぇ・・・焼肉屋か。美味しそう・・・」 「そ、そうっすよね、春咲先輩!ぶっちゃけ俺も最近夏バテ気味だったし、ここいらでスタミナを付けないといけねぇよな!ハハハ!」 「まあ、そういうわけだ。一段落ついたら味見も兼ねて一度食べに行ってみようと思うんだが」 「マジっすか!?」 「但し、男連中はダメだ。金が幾らあっても足りんからな。女だけで行く」 「ガーン!!!」 「でだ。春咲。明後日の放課後に行ってみようかと思うんだが、どうだ?時間は空いているか?」 「あ、明後日ですか?・・・・・・すみません。その日は用事があって」 「・・・・・・そうか。なら記立やリンちゃんを誘ってみるか」 「本当にすみません」 「別にいいよ。春咲が断るのには『何か大事な用事がある』んだろうし。よしっ、それじゃあ解散。とっとと仕事に戻れ、お前等」 解散の号令を発し、鉄枷達を仕事に戻す破輩。今現在対処中の事案にはこうやって無駄口を叩いている余裕、つまり時間を浪費している余裕は無い。 なのに、あえて破輩は時間の浪費を選択した。それは、春咲桜という仲間のことが気に掛かっていたからである。 「(とりあえず、表情は柔らかくなったか・・・。疲れてはいるようだが)」 破輩もまた春咲が疲労を溜めていることに気が付いていた。 「(今対処中の事案で疲労が溜まっているとも考えられるが・・・あれはそれだけじゃ無いと考えるのが妥当だな。 一厘が最近春咲をしきりに気にしているのも気に掛かる。・・・あのバイキングの後からってことも)」 さらに破輩は一厘が春咲を必要以上に気にしていることにも気が付いていた。さすがは159支部を纏め上げるリーダーと言ったところか。 「(不動に尋ねても「知らない」の一点張り。だが、あの男・・・界刺と言ったか、奴が関わっている・・・そんな気がする)」 あの時、店を後にした春咲を追うかのように界刺と水楯、そして一厘が店を後にしたことが破輩にはどうしても引っ掛かっている。 「(だが、今はそっちに時間を割く余裕は無い。全く・・・部下の気持ち1つマトモに察してやれないとは・・・リーダー失格だな)」 自分の机に戻った破輩は短く嘆息する。今は揺らいでいる場合では無い。懸案事項が幾つもある。リーダーたる自分に迷っている時間は無い。許されない。 それでもなお、破輩は視線を春咲に向けてしまう。それも、リーダーたる故の性と言うべきか。 「フア~ッ」 「どうした、そんな大きい欠伸をして」 「いやあ・・・最近寝不足で」 ところ変わって、ここは昼間の成瀬台高校の屋上。夏休みも近くなってきたせいか、授業も短縮ver.になっている。 「例の・・・救済委員活動か?」 「そう。深夜の活動がザラだから、睡眠が足りないな。そのせいで、この前のテスト結果も芳しくなかったし」 「そのかわり、最近は『シンボル』の活動や朝の鍛錬もセーブしているが?」 「やっぱさ、人間たるもの夜にキチっと寝ないと駄目だね。今回のことでそれがよーくわかったよ」 屋上で会話をしているのは界刺と不動。界刺が昼寝をしたいと言ったのでここにいるのだ。 丁度この時間帯の成瀬台の屋上には影が大きくなって昼寝にはもってこいのスペースがある。 「ただでさえ最近は暑いしな。本音を言えば、救済委員なんてすぐにでもやめたいくらいさ」 「だが、そういうわけにもいかんのだろう?なら答えは1つ。やり遂げるのみだ」 「・・・・・・ハァ~」 2人揃って横になって昼寝に突入しようとする界刺と不動。だが、 ピロロロロロ~ 「ん?何だ?くそっ、せっかく人が昼寝をしようと横になってんのに・・・。一体誰だ?」 面倒臭そうに掛かって来た携帯電話に出る界刺。そこから聞こえて来たのは・・・ 「何だよ、リンリン?折角イイ気分で昼寝に突入しようとしてたのに。目覚まし時計気取りですかー!リンリンだけに。全くこれだからリンリンは・・・」 「な、何よ!電話に出て一言目がそれ!?」 「君さ~、支部内で言われない?『コイツ、空気が読めないなあ』ってさ」 「い、言われたこと無いわよ!!アンタと一緒にしないでくれる!!」 「・・・相変わらず口が悪いねぇ、君」 電話主は一厘であった。実は先日春咲を尾行していた最中に携帯電話の番号を交換していたのである。 「で、何?何の用件ですか?リンちゃんサマ?」 「ブハッ!文句の1つ2つぶつけてやるつもりだったけど・・・まぁ、いいわ。そんなことより!私の用件はね・・・」 「春咲桜のことだよね?」 「わ・・・わかってるんなら最初から言え、アホ界刺!!」 一厘の用件とは・・・もちろん春咲のことである。 「とりあえず、今の所は何とか過ごしているよ。というか同じ支部員なんだし、君の方があのお嬢さんと接する時間は多いんじゃないの?」 「そ・・・それは。最近は色々ゴタゴタがあって、余り春咲先輩とも話す機会無いし・・・。それに私は風輪の生徒じゃ無いし・・・」 「つまり、君はあのお嬢さんのためにな~んもしてやれていないってこと?違うかい、リンリン?」 「そ・・・そんなこと!!・・・いや、そう・・・です、はい」 界刺の容赦無い指摘に一厘の声は小さくなっていく。何せやっていることと言えば気に掛けているだけ。実質的には何もしていないのと同じだ。 「まあ、それでも少しは接する機会はあるんだろう?今日だってさ。どうだったの、お嬢さんの様子は」 「今日は・・・何て言うか明るかったです。あの公園で見た時の顔とは雲泥の差でした」 「・・・そうか」 「・・・あなたのおかげ・・・なんですよね?」 「いんや、俺は何もしていないよ。彼女が明るくなったんなら、それは彼女自身の中で何かが変わり始めたんじゃない?」 「変わり始めた?」 「うん。結局さ、人ってのは他人が何を言おうが中々変わらないんだよ。それが変わるんなら、それは本人の意思ってことだと俺は思う」 「・・・」 「いい傾向なんじゃない?今の所は。これが続いたら・・・彼女は立ち直れるかもね。いや、立ち直るじゃないな。ようやく自分の足で立つんだな、うん」 「そ、それじゃあ・・・」 「だけど、そう簡単に行く程現実は甘くないとも思ってたりするよ、俺は」 「・・・どういうことですか?」 「君に調べてもらっていた件・・・つまり、彼女の家庭事情だ。元々君が教えてくれたんじゃないか・・・。あのお嬢さんは中々家に帰らないってさ。 これは俺の予測だけど・・・彼女の家庭事情も今後無視できなくなると思う。ただでさえ風紀委員『だけ』の時も中々家に帰らなかったんだ。 今はそれに加えて救済委員の活動もしているんだし、益々家にいないってことだろう?この現状を家族が不審がると考えるのは妥当な予測じゃない?」 「・・・春咲先輩が家に帰りたがらないのは、支部員全員が知っています。理由が、家族内のレベルの差ということも」 「確かご両親が著名な科学者。んで、その子供達・・・春咲家には三姉妹がいて、その内長女と三女がレベル4だっけか?大層なエリート一家だね」 「・・・それは春咲先輩に対する皮肉ですか?」 「別に。俺は感想を言っただけだよ。・・・リンリン、俺が言っていた長女と三女の能力の詳細はわかったかい?」 「・・・三女・・・春咲林檎については判明しています。ただ、長女の春咲躯園に関しては長点上機学園に通っているので、 彼女に関する情報は『書庫』を利用しても掴めていません。さすがは学園都市の中でも5本指に入る名門校。セキュリティもすごいです」 「そうか・・・。なら仕方無い。その三女・・・春咲林檎について教えてよ」 「わかりました・・・。言っときますけど、これはオフレコですからね。本当はこんな真似はしちゃ駄目なんですから」 「わかってるよ、リンちゃん」 というやり取りの後、一厘から春咲林檎に関する情報を聞いた界刺は電話を切る。 「どうやら思った以上に複雑そうだな」 「ああ、複雑だな。珍しく頭も使ってるしさ。全くいやになっちゃうよ、ホント」 「私から見れば、面倒臭がりなお前があの少女にそこまで肩入れする方が不思議ではあるがな。如何に命が懸かっているとはいえ」 『銅と明星、女神に象徴されるは金星。意味するものは、愛、調和、芸術。混沌とした世界に存在する真理を見通す偉大なる輝星』 『全く、酷いもんだ・・・この世界って奴は。馬鹿が馬鹿やって馬鹿な目を見ないと、“こんなこと”にさえ気付かせてくれねぇんだもんな』 「・・・似てるんだよ(ボソッ)」 「ん?何か言ったのか?」 「いや・・・何でもねぇよ」 不動の言葉に相槌を打った後に眠りに入る界刺。結局2人は夕方近くまで昼寝に没頭していた。 continue!!
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ここは、第6学区にあるコンテナターミナル。第6学区を主な活動場所にしている過激派救済委員の溜まり場。 「それにしても、刺界・・・じゃ無かった、その界刺っていう『シンボル』の変人は結局来なかったわね、雅艶?」 「・・・あぁ。俺としても驚いているくらいだ。あの『シンボル』の一員ならば、必ず助けに来ると踏んでいたが・・・」 躯園や雅艶達過激派は、この溜まり場で今後の方針を話し合っていた。 直近では春咲桜へ制裁を与えたことに対する穏健派の出方、中長期的では第6学区をうろついている風紀委員への対策。この2点が主な主題である。 「しばらくは、ここに集らない方がいいのではないでしょうか?一時の間は風紀委員達も第6学区に絞った活動を行うでしょうし。 それに、先程の戦闘にて荒我拳は176支部の風紀委員と繋がりがあることが判明しています。これは、情報の漏洩という観点から見ると大きな問題です。 もっとも、荒我自身も救済委員で『あった』ため、彼等が親しい関係ならば他の風紀委員に私達の情報が漏れる可能性はそこまで高くは無いと思われますが・・・」 「私も七刀君の意見に同意するわ。それに、ここは穏健派にも知られている。もし、今回の制裁に対する報復を彼等が考えているとしたら・・・」 「報復!?・・・雅艶兄ちゃん・・・」 「心配するな、羽香奈。確かに刈野の言っている可能性も十分に考えられる。だが、俺達と全面衝突を果たして穏健派の連中が選択するかどうか・・・可能性は低いと思うがな」 「何弱気になってんのよ、雅艶、羽香奈、刈野。あのクズを助けに来ない時点で、奴等の本音なんて手に取るようにわかるわ。 要するに、私達を敵に回したくないのよ。もし、その覚悟があるなら、あの負け犬や『裏切り者』が来る前に助けに来てもおかしくないわ。 それなのに、連中は私達へ“制裁の中断”というすぐにでもやれる交渉・・・つまり連絡の1つすらよこさなかった。わざわざ、羽香奈からメールを送ったっていうのにね」 「さっすが、躯園姉ちゃん!頼っもしい!!」 「林檎。あなたは私が必ず守るから安心なさい。どう、麻鬼?私の推測は?」 「春咲の言い分はもっともだ。奴等穏健派は総じてレベルが低い、あるいは高くても戦闘に向いていない連中だ。 対して、俺達は皆レベルも高く、戦闘にも通じている。何を企んでいようとも、あんな弱腰の連中に遅れなど取らない。違うか、雅艶?」 「・・・あぁ、そうだな」 躯園や麻鬼の主張は的を射ている。穏健派は自分達過激派との衝突は望んでいないだろう。真実を言えば、自分達過激派も穏健派との衝突は望んではいないのだ。 仮にも、同じ土俵で共に戦う同士である。思考や方針の違いこそあれ、仲間であることには違いない。 今回の春咲桜への制裁は、あくまでも『裏切り者』への制裁と、今後は『裏切り者』を発生させないという強い意思を示したに過ぎない。 ちなみに、荒我と斬山の2人は過激派の中で既に『裏切り者』として扱われている。故に、議題にも上がらない。制裁が決定事項であるからだ。 「だからこそ、奴が・・・あの変人だけは春咲桜を助けに来ると予想していたんだが。どうやら、奴にとって春咲桜とは命を懸けるに値しない存在でしか無かったようだな」 「難しい言葉で言わなくてもいいじゃない、雅艶。つまり、あの出来損ないのクズは一緒に救済委員に入った仲間にも見捨てられたってことよ。ホント、傑作だわ」 躯園の高らかな嘲笑がターミナルに響く。雅艶は、界刺についてこれ以上考える思考を回すことをやめる。今は、それ以上に気を割かなければならない事案がある。 「そうだな。もう終わったことについて議論しても仕方無い。とりあえず、目下の懸案は荒我と斬山、この『裏切り者』達への制裁と穏健派の出方を注視すること。 そして、風紀委員への警戒。以上3点が・・・・・・」 「・・・・・・?どうしたの、雅艶?急に黙りこくって?」 急に黙り込んだ雅艶に怪訝な視線と言葉を発する峠。だが、雅艶は言葉を返さない。その顔には一筋の汗が流れていた。 「な、何だこれは・・・!!?」 雅艶が発した驚愕の声に異変を察知した過激派は、周囲へ気を張り巡らせる。 荒我達『裏切り者』が攻め込んで来たのか。風紀委員に見付かったのか。否、そのどちらでも無い。 「あ・・・あれ・・・。な、何・・・?」 最初“ソレ”に気付いたのは羽香奈。主に、立ち位置的な理由で。 彼女はある方向に向かって指を指す。その方向から聞こえて来たのは・・・轟音。 「あ、あれは・・・!?」 刈野が“ソレ”を見て顔を青ざめる。 “ソレ”は・・・“水”。 「何・・・だと・・・!?」 あの麻鬼すら焦りの色を隠せない。“水”は・・・自分達に向かってくる“水”はただの水じゃ無い。それは、まるで・・・“激流”。 海面に接していないこの場所で起こり得る筈の無い光景。大型のコンテナさえも押し流しながら突き進んで行くその頂上に・・・居る者達。 「峠!!何時でも『暗室移動』で転移できるように構えておけ!!」 「わ、わかった!!」 「おい、雅艶!これは、一体誰の仕業だ!?お前なら、『多角透視』ならその姿を捉えているんだろう!?」 峠に指示を出した雅艶に麻鬼が問い掛ける。そして、雅艶は重い口を開く。 一番可能性が低いと判断した現実が・・・雅艶達過激派に牙を向けるために出現した。 「あぁ・・・。奴等が来た」 「奴等!?それは、一体・・・?」 「穏健派の連中と・・・『シンボル』の変人だ!!」 「何だと!??」 麻鬼は、今度こそ驚愕の声を漏らす。 穏健派は・・・自分達過激派との全面衝突を覚悟してここに現れた。雅艶の言葉からそう察したがために。 「この“激流”を操っているのは、おそらくはあの変人の仲間・・・『シンボル』の一員だろう。それ以外にも・・・風紀委員の腕章を付けている女も居る」 「風紀委員?まさか、穏健派の連中・・・」 「いや、穏健派とて救済委員には変わりない。如何に風紀委員の中に救済委員を認める変わり者が居たとして、それは極一部だ。おそらく、あの変人の伝手か何かだろう」 「・・・確かに。他に俺達の知らない人間は居るのか!?」 「・・・!!いや、他は全員見知った連中だ。だが、これは・・・春咲!!」 「な、何よ!?」 雅艶は麻鬼との会話を中断して、躯園に声を掛ける。 “激流”が差し迫っている恐怖から足が竦んでいる林檎に身を寄せながらも、躯園は雅艶に反応する。 「あの“激流”の頂上に、お前がよく知っている女が居るぞ!!」 「私の知っている?そんな女・・・・・・!!ま、まさか・・・!!」 雅艶の言葉を受け、ある可能性に気付く躯園。 それは、彼女の頭の中から既に消えていた存在。 「あぁ、そのまさかだ!!あの頂上に・・・お前の妹、春咲桜が居る!!!」 顔が驚愕に染まる躯園。それは、林檎や雅艶以外の過激派の者達も同様に。 あれ程の地獄(せいさい)を味わいながら、それでも屈せずに自分達の前に姿を現した春咲桜の『凱旋』に。 「うおおおおおぉぉぉっっ!!!!」 「何を情けない声を挙げているのだ、農条!!だらしがないぞ!!!」 「師匠の言う通り!!これしきのことで・・・ズブズブッッ!!!」 「言ってる傍から沈んでじゃ無ぇよ、ゲコ太!!うおっ!!」 「で、でもこれは・・・。バランスが・・・!!」 「くっ・・・!!あ、あなたと言い、この“激流”と言い、“宙姫”対策で待機しているあの2人と言い、『シンボル』は化物の巣窟か何かですか!?」 「化物呼ばわりは酷いなぁ、リンちゃん。それに・・・君、あのバカ形製を忘れてるよ。そうだ、化物呼ばわりも含めて後でアホ形製にチクっとこう」 「!!そ、それはやめて下さい!!私が形製さんに潰されます!!!」 「にしても涙簾ちゃんの“コレ”・・・久し振りだなぁ。ハハッ、何だかサーフィンで波に乗ってるみたいだ」 「慣れているからって余裕ぶっこいてんじゃ無いですよー!!幾ら作戦だからって、過激過ぎじゃないですかー!?」 「物静かな娘程過激なんじゃないか?さっきのお嬢さんの行動でも思ったけど」 「!!!」 「過激・・・。ポッ!///」 「水楯さん!?別に褒めてなんかいませんからね!?」 「というか、あのことは早く忘れて下さい!!く、くそっ!な、何で私、あんなことを・・・」 「こりゃ、驚いた。お嬢さんの口から『くそっ!』なんて言葉が出るなんて。ってかあれを忘れろって言う方が無理と言うか・・・」 「も、もうー!!!不条理だー!!!!最悪だー!!!!この、バカ界刺ー!!!!」 「春咲先輩・・・逞しくなっちゃって。よーし、だったら私も!この、アホ界刺ー!!!!」 「・・・・・・何だか、形製の言葉が広まりつつある・・・。俺、悲しい」 “激流”の頂上でギャーギャー騒いでいるのは、界刺、春咲、水楯、一厘、農条、花多狩、啄、ゲコ太、仲場。 この“激流”は、水楯の能力『粘水操作』によって操作されている。1000tを軽く超える水量は、近辺にあった幾つかの屋外プールから引っこ抜いてきたもの。 水楯にとって、水とは粒(水滴)の集りという認識である。そう、それはまるで“涙”の如く時には冷たさを、時には激しさを伴って集う集合体。 故に、彼女が操る“激流”とは“激流”にあらず。その姿を見た界刺が思い付きで付けた渾名・・・“激涙の女王”を水楯は気に入っていた。 自分の名前の一部が渾名に入っていることが秘かなお気に入りポイント。但し、恥ずかしくて誰にも言ったことは無いが。 この“激涙”が響き渡らせる轟音こそが、過激派達に告げる反逆の咆哮であった。 「ぶはっ!!ハァ、ハァ。ったく余裕綽々だなぁ、界刺は。俺なんか、サーフィン代わりの小型コンテナの上に乗るのにも一苦労だってね!!」 「こんなもん慣れだ、慣れ。農条も経験を積めばこの乗り心地を楽しめると思うぜ?」 「いやっ、慣れたくなんかないってね!こんなの、今回限りで十分だ!!」 界刺達は“激涙”の上に乗るために、各々に小型コンテナの幾つかが割り当てられていた。 小型コンテナ間は『粘水操作』で固定されているのだが、さすがに水の流れは凄まじく、その上に安定して乗るというのは農条に限らず他のメンバーも四苦八苦していた。 “激涙”の支配者である水楯と、慣れているという界刺は平然と小型コンテナの上に座っている。 何故か啄だけは、農条達のように四苦八苦するどころか不安定な小型コンテナの上に仁王立ちしているが。 「さて、そろそろ向こうさんも気付いた頃合いかな・・・。花多狩姐さん!」 「!!」 界刺が花多狩に問う。 「やれるね?」 「・・・えぇ。やるわ。やり切ってみせる」 花多狩にとって凄まじい覚悟を迫られる“ソレ”を、しかし花多狩は受諾する。その目には、悲愴にも似た決意の光が宿っていた。 「ようし。それじゃあ、皆手筈通りに・・・」 「界刺さん!」 「ん?何だい、リンリン?」 作戦を開始しようとした界刺に一厘が声を掛ける。その手に握られた・・・界刺から預かった“モノ”を胸の前に置きながら。 「春咲先輩のこと・・・よろしくお願いします!!」 「一厘さん・・・」 「うん、お願いされた」 それは、一厘の心の底からの頼み。そこには、嫉妬も何も無い。ただ、純粋に目の前の男を信頼したからこその頼み。 界刺に春咲のことを頼む一厘の顔には、笑みさえ浮かんでいた。それは、彼女の確かな成長。 その一厘の変化に春咲は驚き、界刺は何時も通りの飄々とした態度で応える。 「では、皆さん・・・そして界刺さん。ご武運を・・・!!」 「ありがと、涙簾ちゃん。お前等、絶対にタイミングを外すんじゃねぇぞ!!“燃やされたスーツの敵討ち作戦”開始だぁぁ!!!!」 「「「「「「「「だからそっちいぃぃっっ!!!!????」」」」」」」」 界刺の作戦名に総出でツッコミを入れながらも、“激涙”は勢いを増して突き進んで行く。 「ど、どうするのよ!?私の『暗室移動』で、とっととここから脱出する!?」 「そ、そうだ。あたしの『音響砲弾』であの水を操っている奴に大音量をぶち込めば・・・」 「馬鹿言え!そんなことをすれば、いよいよあの“激流”は操作不能に陥って俺達を飲み込むぞ!?あの勢いだ。まず、逃げられない!!」 「そ、それじゃあ、やっぱり私の能力でさっさと移動するか、奴等の誰かをここへ転移させて・・・。 くそっ!“激流”が不規則に上下するせいで、うまく奴等の座標を計算できない・・・!!」 峠、林檎、麻鬼が怒声を交えながら話し合っているのを余所に、1人雅艶は考え込む。それは、『敵』の襲撃について。 「(あの後、春咲桜は奴等が保護していたのか・・・。そして、『シンボル』の1人であろうあの女の能力を借りてまで俺達に危害を加えようとしている。 つまり、穏健派の連中は俺達と全面衝突する覚悟で来たということ。あの少女に、あの『裏切り者』にそこまでの価値があるのか?理解できん!)」 穏健派の行動原理が読めない雅艶。だが、今はそんなことに時間を割いている余裕は無い。“激流”はいよいよ雅艶達の直近に差し迫って来た。 「峠!!ここは一先ずお前の『暗室移動』で退避する!!連中への対処はそれか・・・」 「キャッ!!?」 「うおっ!!?」 「むっ?どうした、峠!?麻鬼!?」 「空に幾つもの光源が浮かび上がった!!これは・・・」 「・・・駄目!!これだけ明るかったら『暗室移動』が発動できない!!」 「光源・・・!?くっ!!あの『シンボル』の変人の仕業か!!!」 麻鬼と峠の言葉から、光源の存在とそこに込められた意図を理解する雅艶。『敵』は暗闇では絶対的な移動能力を誇る峠の『暗室移動』を封じるつもりなのだ。 「界刺という男の仕業か!!確か光学系能力者だったか!?」 「おそらく。しかし、それ程の光源を生み出せるとは・・・。光学系と言っても既にある光を操るのでは無く、電子制御系能力者のように光を生み出すタイプなのかもしれん!!」 麻鬼の問いに己の推測を交えながら返答する雅艶。実の所、盲目の雅艶には能力で生み出された光源は全く影響が無い。『多角透視』自体も光学系能力は一切無効なのである。 無効・・・すなわち、雅艶には光学系能力で隠されている何かを見付けることができても、光学系能力自体を感知することはできないのだ。 これは、界刺が身を持って体験したことによる推測でもあり、そしてその推測は当っていた。今後この推測に基づくある作戦が行われる予定だが、今の雅艶には知る由も無い。 「ど、どうするのよ!!私の能力は発動できない!!“激流”はもう目の前!!このままじゃあ・・・」 「・・・関係無ぇよ」 「き、金属操作!?」 峠の焦り声に言葉を返したのは、今まで沈黙を守っていた金属操作。その表情には、苛立ちが如実に表れていた。 「あっちが“激流”なら・・・こっちも“激流”をぶつけてやりゃあいい!!!」 前髪で隠れている金属操作の目が見開かれる。その視界に収まる金属―大型コンテナ―が瞬く間に液状化される。高温を伴って。 自ら金属操作と名乗るこの名前は、彼の能力名でもある。厳密に言えば、人名の方は名前の通り金属操作、能力名としては『金属操作 メタルコマンド 』という風に区別しているが。 彼の視界に入る金属は、全て彼の支配化に置かれる。そして、支配下に置いた金属類を自由自在に鋳造する。これが、彼の能力『金属操作』の真髄である。 「ムシャクシャする・・・。イラつきが収まらねぇ・・・。こうなったら、あいつ等をぶっ潰して晴らしてやる!!」 液状化した大量の金属を壁状に集め、“激流”にぶつけようとする金属操作。 「待て、金属操作!!それなら、集めた金属を使って影を作ることで峠の『暗室移動』による脱・・・」 「うらああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」 雅艶の制止はイラついている金属操作には届かない。彼の意思により発射される金属の壁が“激流”と衝突する・・・瞬間!! ザアッ!!! 「!?」 金属操作は意表を突かれる。何故なら、金属の壁と衝突する瞬間、“激流”が中程から真っ二つに裂けたからだ。 まるで、初めからそうするよう構えていたように。でなければ、あれ程の水量を瞬間的に操作することはできない。 金属操作が放った金属の壁との衝突を避け、とてつもない勢いで左右に分かれる“激流”。 プシャアアアアァァァッッッ!!!! 2つに分かれた“激涙”が、更に変化する。それは、まるで水でできた蜘蛛の巣。網目状に張り巡らされた水の道には、等間隔で小型コンテナが設置されていた。 「一厘さん!!」 「わかってますって!!水楯さんもフォローをお願いします!!」 それは、水楯と一厘の能力によってできた、空中を走る水の道。 1個に割ける重量が15kg以下に限られる一厘の『物質操作』によって操作・維持される小型コンテナを、水楯の『粘水操作』にて補助する。 水楯の『粘水操作』では、小型コンテナの正確な設置を行うことができない。そのために、一厘の『物質操作』が設置の役割を負う。 その水の道を、界刺達が駆け抜けていく。各々が小型コンテナに乗った瞬間に『物質操作』は維持できなくなるが、『粘水操作』にて極短時間だけそれを支える。 「(このために、この場所の地図が必要だったんだ)」 一厘は、今更ながら界刺が自分へ依頼して来た件の真意を理解する。水の道を敷くに最適な場所は何処か。 その時に過激派の連中が居る位置次第で最適は変わる。だから、その予測パターンを幾通りも出すために、自分の懺悔すらまともに取り合わずにあくまで地図の伝達を急かしたのか。 『俺って光を操る関係上、周囲の位置取りとかって気にするんだよねぇ』 作戦概要を説明中に界刺が放った言葉を、一厘は身を持って体感していた。だから、この体感を絶対に無駄にはしない。そう、心の中で誓った。 そう思う間に、界刺達は無事コンテナに乗り移った。作戦第1段階がもうすぐ終わる。そして、自分と水楯に割り振られたもう1つの作戦を実行に移す。 それを発動するために少し離れた位置に居る水楯が、水の道を1本の水柱へ変化させる。 「・・・・・・圧縮!!」 突如水の道に敷き詰めた、数多の小型コンテナを取り込んだ水柱が圧縮された。小型コンテナが軋み、あちこちが凹む程に。 その直後、圧縮されて球とも四角とも取れる形になった水の1点に―あえて勢いを付加して―圧縮から開放した水流を集中させる。 「・・・・・・・・・っっ!!!」 「はあああああぁぁぁっっ!!!」 水楯でもコントロールし切れない勢いで、水ごと小型コンテナが放出される時が来た。方向、角度等の微調整は一厘が整える。そして・・・“ソレ等”は解き放たれた。 continue!!
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ここは第6学区の一角にある倉庫の中。そこにあるのは・・・地獄(せいさい)の実現。 「ギャアアアアアアァァァァッッッ!!!アアアアアアァァァッッ!!!!」 「オラオラオラ!!!もっと、泣け!!喚け!!叫べ!!この林檎ちゃんをもっと満足させろよぉ!!!」 「アンタみたいな出来損ないに恥をかかされた私の身にもなってみなさい、桜・・・!!」 「心配いりませんよ、春咲桜。静かに・・・受け入れなさい」 「そんな理由で救済委員に・・・あなたは風紀委員にふさわしくない!!よって、これはあなたへの罰です!!」 「ガアアアアアァァァッッ!!!!!アアアアアアァァァッッ!!!!!」 地獄の中心にいるのは・・・春咲桜。今彼女は過激派救済委員から制裁という名の暴力に晒されていた。 春咲の左手首には手錠の片方が繋がれ、もう片方はすぐ傍の鉄柱に繋がれている。 『劣化転送』を用いれば手錠を外すことはできるが、林檎の『音響砲弾』がそれを許さない。 現在春咲は林檎と躯園からは殴打を、刈野からは名前の入っていない焼き印を体に押し付けられている。 着用している風輪学園の制服は既にボロボロで、その隙間からは包帯が見え隠れしている。 「自業自得的な報いって言った所かしら?それにしても・・・琉魅、あなたの『絶対挑発』ってホント便利的な能力よねぇ」 「そりゃ、何たってあたしの自慢の能力だもん。救済委員になった理由や目的を吐かせることくらい造作もないって!」 「・・・にしても、ちょっとやり過ぎじゃねぇか?いくら、今後のためとは言え・・・」 「だからこそ、ここで断固たる制裁を与えねばならない。俺達救済委員のためにな」 「麻鬼の言う通りだ。これは、単なる見せしめじゃ無い。金属操作、それはお前も理解した上で、作戦に参加しているのだろう。 それとも・・・お前も『裏切り者』になりたいか?」 「いや・・・なりたかないけどよ・・・」 麻鬼と雅艶の言葉に強く反論できない金属操作。金属操作自身、春咲が『裏切り者』であるという判断に異論は無い。何せ、現役の風紀委員だからだ。 何時春咲から自分達の情報が他の風紀委員に漏れるかわからない。過去に、風紀委員から犯罪人のレッテルを貼られた金属操作にとっては、春咲の行動は許し難かった。 だが一方で、これ程の制裁を与えるのはやり過ぎではないのか?そう考えてしまう自分がいることも確かなのである。 「羽香奈さん」 「何ですかぁ?七刀さん」 「後程あなたの能力と私の能力を併用して、春咲桜の記憶を“断裁”します。その時はよろしくお願いします」 「OKっす!」 羽香奈と七刀のやり取りを見て、金属操作は制裁を受け続けている春咲に目を向ける。春咲は、制裁の終盤に七刀の『思想断裁』により記憶を消されることになっていた。 それは、自分達救済委員の情報が漏れることを防ぐため。そう、雅艶は言っていたが・・・ 「(・・・くそっ!!何だよ、このモヤモヤとした気分はよ!!)」 金属操作の心中に、本人にもわからないモヤモヤが溜まり始めていた。 「カハッ・・・ゴホッ・・・」 「ハァ、ハァ。・・・こんな所かしら。少し休憩しましょうか?」 「賛成~い。躯園姉ちゃん。あたしの手を見てよ。桜を殴り過ぎて赤くなっちゃったよぉ」 「それは・・・血ではないかしら、林檎さん?」 躯園、林檎、刈野による制裁は小休止に入ったようだ。まるで運動後の休憩のような雰囲気を醸し出す3人。 そのすぐ近くに血塗れで倒れているのは・・・春咲桜。何とか意識はあるようだが、その目はもはや焦点が合っていなかった。 「春咲さん。そろそろ“断裁”してもよろしいのですか?」 「・・・まだまだ。こんなもんじゃ足りないわよ、七刀。私が受けた恥辱は・・・こんなもんじゃないんだから!」 「林檎ちゃんもまだ物足りないなぁ。こんな気持ちを味わえちゃうんなら、あたしも救済委員に入ってみようかな~。どうかな、躯園姉ちゃん?」 「あなたなら大丈夫よ、林檎。桜のような出来損ないなんかとじゃあ、話にならないわ。『劣化転送』。私の見立ては正しかった。クズにはお似合いの名前ね、フフッ。 それに引き換え・・・あなたは優秀よ、林檎。『音響砲弾』。いい名前ね。さすがは、私の“唯一の”自慢の妹。愛してるわ」 「ありがとー!!あたしも大好きだよ、躯園姉ちゃん!!」 躯園と林檎のやり取りを、春咲は焦点の合っていない目で見る。あれが、普通の姉妹が描く光景。あれが、普通。 なのに・・・何故自分はこんな目に合っている?何故自分を血を分けた家族は助けてくれない?何故家族の手によって自分は血塗れになっているのか? 「(・・・もう、いいや。全部・・・全部私がいけなかったんだ。こんな、こんな無謀なことをしたから・・・)」 春咲の思考が・・・闇に染まっていく。その色は・・・絶望の色。 「(もう、目を閉じよう。そうすれば・・・あんな光景、見なくて済む。気を失えば・・・痛みも感じない・・・)」 底知れない絶望の深みにその身を沈めて行く。 「(そうだ・・・。もう死んじゃえば・・・こんな思いもしなくて済む。こんな・・・こんなことが続くなら、いっそ・・・)」 春咲は『劣化転送』で近くにあった小石を自分の右手の中に転送した。そして・・・ 「(こ、これを・・・私の頭に転送すれば・・・私は死ぬ。・・・それで、いい。だって、私には・・・もう、これしか・・・)」 自殺。この苦しみから逃れられる手段。春咲は、纏まらない思考の中でその手段に手を染めようと・・・ 『皆のために責任を取るってんなら・・・“死んで”じゃ無くて“生きて”果たせよ、大馬鹿野郎』 「(!!!)」 その瞬間に、頭の片隅から聞こえて来た言葉。それは、かつて界刺が春咲に言った言葉。 『力を証明したいのなら・・・名誉ある死を遂げた英雄としてじゃ無くて、無様に生き残った凡人として証明してみせろよ、春咲桜・・・!!』 自分の行動に“死んで”では無く“生きて”責任を取れ。力を証明したければ“生きろ”。そう言った、言ってくれた界刺。 『レベルなんてどうでもいいだろ?能力の活用ってのは使用者の腕の見せ所さ。例えば「劣化転送」だって、使う奴次第で幾らでも化ける。俺はそう思うよ』 躯園に切り捨てられた己の『劣化転送』を使う人間次第で幾らでも活用できる。そう、教えてくれた界刺の言葉を思い出し、春咲は小石を握り込んだ右手に力を込める。 「(界刺さん。私は・・・私は・・・あなたを信じてもいいですか?こんな出来損ないの私を・・・いつも見てくれていたあなたを、信じさせてくれますか?)」 小石の転送先は、自分の頭では無く・・・躯園。能力を発動した後に待っている地獄は、春咲にも容易に想像できた。だが・・・ 「(最期に・・・私はあなたを信じてみようと思います。“死んだ”じゃ無くて“生きた”私の力を、私自身をあなたに証明するために・・・)」 能力は・・・発動される。 グサッ!!! 躯園は、その時理解できなかった。自分の身に起きた異変を、その瞬間には。 違和感がある。痛みがある。それも、自分の右手から。バンドに覆われた右手から。 だから、バンドを外した。痛みの発生源を見極めるために。急いで。そして、確認する。自分の右手の中心にあったものは・・・小石。 春咲桜の『劣化転送』で躯園の右手に転送された小石。それが、躯園の右手の中にあった。血を噴出しながら。 「アッ、アアッ、アアアアアアァァァッッ!!!!!」 「ど、どうしたの、躯園姉ちゃん!!?」 「春咲さん!?」 「右手から・・・!?は、早く手当てを!!」 躯園は、自分の右手の中に小石があるのを認識した直後に叫び声を挙げる。林檎と七刀は驚き、刈野は躯園の右手から血が噴出しているのを確認し、手当てのために躯園に近付こうとする。 「待て、刈野!!春咲に近付くな!!七刀!林檎!お前達も早く春咲から離れろ!!」 「!?で、でも・・・!?こ、これは・・・!?」 雅艶の指示に困惑する刈野だったが、その意味を理解するのに時間は掛からなかった。 「赤い・・・煙?」 「そうだ・・・。春咲の能力『毒物管理』だ。今奴に近付けばその毒素によってこっちがやられるぞ!! それに・・・今の春咲は痛みで己の能力をうまくコントロールできていない。あれでは・・・」 躯園の能力『毒物管理』とは、人間にとって有害である物質を沈静化した上で体内に蓄える能力である。 躯園は、戦闘時には自らを傷付けることで傷から噴出した赤黒い煙を空気中に撒き散らし、その有害物質によって攻撃を行うという戦法を採っている。 但し、あくまで沈静化しているだけであり、有害物質への耐性を得る能力では無い。 よって、何らかの理由で沈静化できない―『毒物管理』を行使できない―状況になった場合、躯園は自ら溜め込んだ有害物質に体を苛まれる危険性があるのだ。 「グッ!!!シュコー・・・シュコー・・・」 「よし・・・摘出完了っと」 躯園は常に持っているガスマスクを被り、有害物質が含まれる煙を吸い込まないようにした。 次に、煙の範囲外から峠が『暗室移動』による空間移動で躯園の右手に刺さった小石を摘出する。 その上で刈屋から投げられた包帯等で、傷の手当を行った。 「躯園姉ちゃん・・・」 「上下ちゃん・・・これって」 「えぇ。私と同じ的な能力が行使されたみたいね」 「・・・ということは」 躯園の状態を心配する林檎を余所に、峠達は今起きた現実を認識する。 「えぇ。今ここにいる能力者の中で空間移動系能力者は2人だけ。1人は私。もう1人は・・・」 峠の視線の先にいる者・・・それは、未だ倒れているものの、その目を躯園に向けている少女―春咲桜―であった。 「あの『裏切り者』。まだ、そんな余裕があったなんてね。少し感心したけど・・・お返しよ。有難く受け取りなさい」 そう言った後ポケットに手を突っ込み、その中にあったもの―鉛玉―を『暗室移動』にて転送する。転送先はもちろん・・・ ドンッ!!! 「ギャアアアアアアァァァァッッッ!!!!!」 春咲の右手の中心。くしくも春咲が躯園に対して行使した転送場所と同じ場所を峠は指定し、転送したのだ。 「シュコー・・・ハァ、ハァ。七刀・・・」 「春咲さん。傷は大丈夫・・・」 「これ・・・借りるわよ」 「春咲さん!?」 その様子を見ていた七刀に躯園が近付いて来た。その右手には包帯が巻かれている。煙が出ていない所から見ると、手当ては済んだようだ。 「クハッ!!ウウウゥゥッ!!!」 「このっ・・・このっ・・・このっ・・・」 右手に鉛玉を転送されて苦しみの声を挙げる春咲に躯園が歩み寄る。そして・・・ 「このっ・・・出来損ないがああああぁぁぁっっ!!!!!!」 グサリ!!! 「ガアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!!」 躯園は七刀から奪った日本刀を、春咲の右手―鉛玉が転送された中心―に突き刺したのだ。 「このっ!このっ!!このっ!!!この私に・・・クズが何をしたあああぁぁっっ!!!」 「ギャアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!」 突き刺したまま刃を回転させて―抉るかのうように―傷口を広げていく躯園。これにより、峠が転送した鉛玉は外部に出たものの、傷としては更に深いものとなっていく。 「アアアアアアァァァッッ!!!ウアアアアアアァァァッッ!!!」 「クズの分際でっ!!!出来損ないの分際でっ!!!この私に・・・この私にぃ!!!」 躯園による春咲への暴行は、その後5分程続いた。 「ハァッ・・・カハッ・・・」 「ハァ、ハァ・・・」 春咲はもう碌に言葉すら話せない状態になっている。そんな彼女の目に映るのは・・・腕章。 「あなたには・・・この腕章は必要ないわよね?」 それを持つのは刈野。手には発火能力により構成された火の玉があった。 「えっ・・・?」 「ついでに、この趣味の悪いスーツも燃やしてしまいましょうか。見てるだけで気が狂いそうだわ、これ」 それは、風紀委員の腕章。早退する時に支部に置き忘れたので、界刺に返すスーツを入れていた袋の中に入れてしまっていたのだ。 「ま・・・待って・・・。そ、れだけ・・・は・・・」 「何が『待って』よ。ふざけないで。今のあなたに・・・これを付ける資格は無い!!」 春咲の懇願に気を悪くした刈野は躊躇無く、火の玉を腕章に―ついでにスーツにも―ぶつける。 「ああぁぁっ・・・!!!」 燃えて行く。腕章。1分も経たずに、それは炭と化した。 「さすがにスーツの方は時間が掛かるわね」 「刈野・・・。もし火事になったら危ないわ。そのスーツの火は早く消さないと・・・」 「春咲さん?」 丁度半分程燃え尽きていたスーツを春咲は刈野から奪い取る。そして・・・ 「火は・・・このクズの体を使って消しましょうか!!!!」 「えっ・・・ガァッ!!!痛い!!熱い!!や、やめてええぇぇぇ!!!!」 燃えているスーツを春咲に叩き込む。何度も。繰り返し。その度に、春咲の体に火傷が刻まれて行く。 「ハァ、ハァ。フフッ。やっと消えたわね。クズにしては上出来かしら?クズにしては。フフッ」 「・・・・・・」 「でも・・・火事になる原因はクズでも取り除かないと・・・ね」 「・・・へっ・・・?アアァ・・・!!や・・・め、て」 スーツ“だったもの”を放り投げた躯園は、春咲のボロボロになった制服―彼女の言う所の火事になる原因―に手を掛ける。 そして・・・引き裂いていく。更なる制裁を加えるために。 「うん?これは・・・文字?」 「あ!!それ、あたしが桜に刻んでやったんだ!!うまいでしょう、躯園姉ちゃん?」 春咲の体を覆うように巻かれていた包帯を引き裂いた先にあったもの。それは、文字。かつて林檎が春咲の体に刻んだ・・・“血文字”。 「・・・えぇ。上手にできているわよ、林檎。さすがは私の妹ね」 「へへ~ん。そうでしょ、そうでしょ!」 「・・・七刀」 「・・・はい。何でしょう、春咲さん?」 春咲の体に刻まれた“血文字”見た躯園は、七刀を呼ぶ。そして、提案する。林檎に負けず劣らずの、否、それ以上の提案を。 「このクズの記憶を消すのよね?」 「はい。私達の情報が漏れることを防ぐために」 「だったら・・・そこに追加して頂戴。このクズが、私達春咲家の人間だという記憶を!!できるわよね!?」 「えぇっ・・・?」 春咲は、最初は躯園の提案をうまく理解できなかった。だが、時間が経つと共に、その言葉が、提案の中身が春咲に染み込んで行く。 「えぇ。もちろん可能ですが・・・本当によろしいのですか?」 「・・・いいわよ。こんなクズと同じ血が流れているというだけで虫唾が走るわ。・・・そうね、他にも追加しましょう。例えば・・・このクズが風紀委員である記憶を!!」 「・・・・・・」 「私達や穏健派の連中の記憶も!!本当の仲間・・・この出来損ないが居る風紀委員の連中の記憶も!!春咲家の記憶も!! このクズの名前すらも全部消してやればいい!!そうでなければ、私が負ったこの傷の怨みは・・・晴れはしない!!! 但し、『劣化転送』だけは残しておいてよ。私がこのクズに付けた名前なんだから」 「春咲さん・・・」 躯園の頭の中には春咲に対する憎悪しか無かった。それを知った七刀は頷く。 「いいでしょう。春咲さんたっての望みとあらば、この七刀列衣、持てる力の全てをもって、春咲桜の記憶を“断裁”してみせます」 「そう。ありがとう、七刀。・・・あっ!そういえば、あなたの刀・・・まだあのクズの手に刺したままなんだけど・・・」 「問題ありません。私の『思想断裁』は、刃物であれば何でも行使できますので」 「あっ!あたし、カッターナイフ持ってるよ。これ、よかったら使って下さい!」 「これはこれは。ありがとうございます、林檎さん」 躯園の提案を受諾し、林檎からカッターナイフを受け取った七刀は、春咲の腹の上に座り込む。 「羽香奈さん。準備はよろしいですか?」 「・・・うん。早く終わらそうよ。私・・・気分が悪くなって来たよ」 「わかりました。善処します」 『絶対挑発』による記憶の掘り起こし担当の羽香奈の言葉を受け、早々に“断裁”を済ませようと決意する七刀。 「成程・・・これが先程仰られていた“血文字”ですか・・・。フムフム」 「や・・・いや・・・」 制服もスカートも包帯も剥ぎ取られ、また、包帯を巻いていたがために胸の下着を着けておらず、現状はほとんど裸も同然な春咲に刻まれた“血文字”を観察する七刀。そして・・・ 「では、私も林檎さんにならって“断裁血文字バージョン”で行きましょうか。文字は・・・『風紀委員失格』とか、『不良風紀委員』とか・・・。 フフッ、これでは刈野さんの仕事を私が奪ってしまったような感じになってしまいますね」 七刀の手に握られたカッターナイフが春咲に近付く。 「せめて、一時でも早く苦しみから解放されるよう努力しますので。では・・・行きます」 「やっ・・・いやっ・・・いやっ・・・いやあああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!」 数分後、春咲桜の記憶は・・・“断裁”された。 「さて、最後の仕上げね。刈野。準備はできているの?」 「えぇ。もちろん」 躯園と刈野のやり取りのすぐ近くで、目を虚ろにしてグッタリ倒れている少女がいた。 その身には下半身に着けるボロボロの下着のみ。体は・・・あらゆる傷に覆われていた。 右手には日本刀が刺さったまま、左手は手錠に繋がれている少女は、身動き一つ取れない。否、その力は残っていなかった。 そんな少女を・・・林檎は嬉々と、雅艶・峠・七刀・麻鬼は冷徹に、金属操作・羽香奈は顔をしかめながら眺めていた。 もうすぐ、地獄(せいさい)が終わる。それは、少女にとっての“最後通牒”。 「ほらっ、ちゃんとその目で見なさい!!この出来損ないが!!」 「ぐぅっ・・・」 躯園の足が少女の左頬を踏み付ける。強制的に首を右向きにされた少女は・・・知る。自分に近付いて来る“最後通牒”を。 「情けの1つくらいは掛けてあげるわよぉ、クズ。アンタを殺さないでいてあげる。何故なら、アンタなんかどうせほっといても死ぬような存在だから」 それは、生と引き換えに焼き刻まれる“最後通牒”。その焼き印に描かれた文字は・・・『風紀委員失格』 「アンタは・・・生まれるべきじゃなかった人間。生きている価値が無い人間。この世界に不必要な人間。この世界から・・・いなくなればいい人間」 焼き刻まれる箇所は・・・右腕。そこは、本来風紀委員の腕章が付けられる場所。そこに刻む。二度と風紀委員として生きることができないように。 「じゃあね、出来損ないのクズ。二度と・・・私の前に姿を現さないで頂戴」 “最後通牒”が少女の腕に近付く。少女はもう声も出せない。躯園によって、その焼き刻まれる様を見せ付けられようとする少女の目から涙が零れ落ちた・・・・・・その時!!! 「ウオオオオオオオオォォォォッッッ!!!!!!」 それは、声。それは、男の声。それは、男の叫び声。それは・・・怒りが込められた男の叫び声。 「「!?」」 今まさに少女に“最後通牒”を刻もうとした躯園と刈野が、その作業を中断して振り向く。そこにいたのは・・・己が拳を見せ付けるように仁王立ちする男。 男は少女を見る。少女の体に刻まれた傷を。男は・・・抑え切れない怒りの声を挙げる。 「テメェ等・・・。女1人に大人数で制裁かよ。ふざけんじゃねえぞおおぉぉっ!!!!!」 “救いの手”が存在しなくとも、“自分で立ち上がる足”が存在しなくとも、“己を貫き通す拳”なら、その男―荒我拳―には確かに存在した。 continue!!
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超能力が科学によって解明された世界。能力開発を時間割(カリキュラム)に組み込む巨大な学園都市。 その街に住む中学生・御坂美琴は、学園都市で7人しかいないといわれるレベル5の内の一人で第3位に位置する超能力者。 電磁力を操るその能力から“超電磁砲”の異名をとる。後輩のテレポーター・白井黒子と共に、学園都市で起こる出来事に(興味本位で)関わり、解決すべく今日も事件に立ち向かう。 とある科学の超電磁砲画像検索 とある科学の超電磁砲動画検索 とある科学の超電磁砲クチコミ #bf とある科学の超電磁砲関連ブログ検索1 #blogsearch とある科学の超電磁砲関連ブログ検索2 #blogsearch2 名前 コメント
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今はゴールデンウィークが終わり、来月は祝日が無いのかと考えると憂鬱になりそうな5月の中ごろである。 新学期が始まってからというもの、世界が分裂しかけたとか、長門が雪山に引き続き倒れたとか、 先の事件で約束を果たした古泉が機関の反感を買い転校させられ掛けた等の非日常な出来事から、 鶴屋家での花見大会第2弾等の日常的な出来事までイベント目白押しだったわけだが、それらもひと段落して 俺はおそらく束の間であろう平穏な時間を満喫していた。 そんなある日の事である、 「おーい○○(俺の名前)。」 と仕事から帰ってきた親父は俺を呼んだ。 「どうした?親父。」 「上司にレストランの割引券を貰ったんだが、すっかり忘れててな、期限が明日までなんだ、 しかも俺は明日用事があって行けん。だからお前にやる。」 と言って優待券を俺に渡した。そのとき、それペアのやつだし、お前ももう高2なんだから気になる子ぐらいいるだろその子誘っていって来い。 とか言ってた気がするがスルーし、 「まあ、貰えるんなら貰っとくよ。」 とだけ言って部屋に戻った。 明日はちょうど休み、しかもSOS団の活動もない。さて誰を誘おうか、とけっこう高そうなレストランの優待券を眺めつつしばし考え、 ハルヒを誘おうという結論に達し、あいつの携帯に電話をかけた。 ハルヒを誘おうとしたのは別にあいつと二人で食事に行きたいというわけではなく、 朝比奈さんや長門誘って、それがハルヒにばれたらどんな罰ゲームを食らうかわからず かといって古泉と男二人で行く気のもなれないから仕方がなくである。まあそれに、明日は…。 「どうしたの、キョン。」 「いや、親父にレストランの優待券ペアのやつを貰ったんでな、せっかくだから偶には団長様に 奉仕しようと思って。明日いけるか?」 「明日!?えらくきゅうね。」 お前だけには言われたくないね。 「優待券の期限が明日までなんだよ。まあ無理なら別にいいが…。」 「別に無理じゃないわよ。ただあんたがらしくも無くいきなり言い出したから驚いただけ。」 「そうか、ならいいが。」 その後俺はそのレストランの場所のことや、そのレストランは結構お高い所だが 昼時は手ごろな値段な値段で若い人たちにも人気があること(階段を上がる前に親父が言ってた。)を説明した。 「それで集合時間と場所は?」 「このレストランの最寄の駅はいつもの駅から30分くらいだから、11時半にいつものところに集合でどうだ?」 「わかった。」 そう言ってハルヒは電話を切った。ここら辺は相変わらずだな、やれやれ。 そして翌日。 俺はいつものところに自転車を止めて例の場所に向かった。携帯を見ると時刻は10時25分。 こっちから誘っておいて相手を待たせるわけにもいかんからな。いくらハルヒと言えども1時間前に来れば大丈夫………。 俺の時間は一瞬止まった。 俺が駅前で見たものは、薄手のナイロンジャケットに、裾を黒いレースで飾ったオレンジ色のプリーツスカートを着て、 薄っすらと化粧をした顔に不安そうな表情を浮かべ時計を見ている我らがSOS団団長だった。 そのとき、俺は不覚にもハルヒをかわいいと思っちまった。 一瞬首を吊りたくなったが、ハルヒの表情を見ていると早く話し掛けたほうがいい気がしたので何とか気を取り直しあいつに声をかけた。 「よぉ、待ったか?」 ハルヒもやっとこっちに気づいたらしく、 「べっ、別に、あたしもついさっき来たところ。」 となぜかアヒル口で返事した。 「そうかい。」 「所で、遅れてきたから罰金ね。お昼代あんた持ちだから!」 気が付くといつもの笑顔に戻っていたハルヒは俺にそう言った。もちろんポーズもいつものやつでな。 まったくさっきの表情はなんだったんだろうね…。まあ、あいつは笑顔が一番だからよしとしようかねぇ。 「あのなぁ、遅れてきたって…。俺は約束の時間の1時間前にここに来たんだが。」 「何言ってんの。誘ったあんたが誘われたあたしより後に来たんだから、遅れてきたことになるに決まってんじゃない!」 ホント、なんでこんな嬉しそうな表情でこんな事言うんだろうね。 「ほら、そんなことよりさっさと行くわよ!」 「ちょっ、待て、そんなに急いだって早く着きすぎるだけだろ。てかっ、そんなに引っ張るな、転ぶだろうが。」 「なにぐだぐだ言ってんの!」 そして俺は改札口までそのまま引っ張られた。やれやれ。 その後これと言って語ることもなく俺たちの乗った電車は目的の駅に着いた。 「どうする?まだ11前だが。昼にするにはちょっと早いよな。」 「そうね。とりあえず1時間くらい町をぶらつかない?」 まあそんなところだろうな。 「OK。それじゃ、行きますか。」 「わー、綺麗。」 今俺たちがいるのはアクセサリーショップ。そんでもってハルヒが見ているのは携帯のアクセサリーである。 具体的に言うとイルカのアクセサリーで色は透明。確かに綺麗だがその分値も張る代物だ。 ハルヒ的にも懐に厳しいのか名残惜しそうにアクセサリーを戻していた。しょうがないな…。 「それ欲しいのか?」 「えっ?」 「だから、そのイルカのアクセサリーが欲しいのかと聞いているんだ。」 「そりゃ、欲しいけど。それ結構高いから止めといたの。」 「買ってやるよ、それ。」 「いっ、いいわよ別に…。」 あな珍し。あの唯我独尊な団長様が遠慮している。 「お前らしくない、遠慮するなって。今朝、臨時収入(今朝親父がニヤニヤしながらくれた)が入ってな、昼飯台を考慮に入れても金は大丈夫だからさ。」 そう言って俺はイルカのアクセサリーを取ってレジに向かった。 「ほらよっ。」 俺は買ってきたイルかのアクセサリーをハルヒに渡した。 「……あ、…ありがと。」 「んっ。なんだって?」 「聞いてなかったあんたが悪い!こっの、馬鹿キョン!!」 「おわっ。」 いてて、何でか判らんがハルヒは俺を吹っ飛ばして店から出て行っちまった。やれやれ。 「まてよ。」 何とかハルヒに追いついてハルヒの機嫌を直したころにはもう正午を回っていた。 「そろそろ昼飯食いに行くか。」 「そうね、いきましょ。」 とまあ歩くこと10分レストランに到着した。海に面しているので景色が良くランチタイムは手ごろな値段のメニューもあるので俺たちみたいに若い客も結構いた。 「お客様、2名様でよろしいでしょうか。」 「「はい。」」 被っちまった。恥ずかし。 「こちらへどうぞ。」 店員の女性は微笑ましそうに俺らを席に案内した。 「こちらになります。」 席に着くなりアヒル口になったハルヒは、 「あんたのせいで恥をかいたじゃない。」 俺のせいかよ。まあそんな事をこいつに言っても無駄なので溜息ついてメニューに目を通した。 「過ぎたことをとやかく言っても始まらん。俺は日替わりランチとモカにしようと思うがおまえは?」 ハルヒはアヒル口のまま、 「あたしは日替わりランチとミルクティー。あと、デザートに苺のパフェ。」 その後俺たちは注文したものが来るまで他愛もない会話をし、つつがなくランチを満喫した。 因みにハルヒの機嫌は飯が来るとすぐに直った。単純なやつ…。 「苺のパフェとミルクティーとモカになります。」 食後に頼んでおいたものが来た。 早速一口飲んでみたが美味かった。いつもの喫茶店のコーヒーもいいが、やっぱりこういう所のやつは格別だな。 ふとハルヒを見ると、あいつはこれでもかってくらい幸せそうな顔でパフェを食っていた。 いや本当に、こんな顔で食われたらパフェの方も本望だろうな。 「なによ。人の顔をじーっと見て。」 やべっ。俺そんなにハルヒの顔を見てたか。とりあえず何か言わないとまずいな。 「いや。お前があまりにも幸せそうにパフェを食うんでなおごりがいがあると思ってただけだ。」 「…ばか。」 ハルヒはいきなりそっぽ向いた。アー…、またやっちまった。 ここで今日、何度目かにハルヒの機嫌の直し方を考えたのがまずかったんだろうね。 「隙有り。うりゃー!」 「なっ!?」 ハルヒにまだ一口しか飲んでないモカ全部飲まれちまった。 「なーに恨めしそうな目してんの。さっさと飲まないで考え事してるあんたが悪いのよ。」 「あのなあ、熱い飲み物を一気飲みすんのは世界広しといえどもお前くらいのもんだ。それに…、」 それ以降の台詞は言えなかった。 「はいはい。あたしのパフェ揚げるからから機嫌直しなさい。」 と言ったハルヒにスプーンで口を塞がれちまったからだ。恥ずかしくて死にそう…。 「間抜け面。」 ハルヒは嬉しそうな顔と声でそう言った。 「所でこの後どーすんのよ。」 「考えてないな。」 「はぁ…。」 そんな露骨にため息つくなよ。それは俺の専売特許だ。 「そんなことだろうと思ったわ。」 と言って映画のチケットを2枚取り出した。 「昨日有希に貰ったの。『明日でSOS団は創設1周年。彼と二人で見てくることを推奨する…。オススメ。』だそうよ。」 よく見るとその映画のタイトルは春休み前に長門から借りた本のそれと同じだった。 「言っとくけど、有希に進められたから見に行くのよ。 別にあんたと映画見たいとかそういうのじゃ無いんだからね!」 「わかってるよ。それで、どこで見るんだ?」 「駅を挟んで反対側にシネマがあるからそこでよ。」 「それじゃあ支払い済ませて行こうか。」 俺はレシートをとってレジに向かった。優待券を使ったが二人分の代金は結構なものだった。 ファーストフードなら何食分になることか…、改めて親父に感謝すべきかもしれない。 そう思いながら支払いを済ませると、 「ほらほら、さっさと次いくわよ、キョン!」 と言ったハルヒに引っ張られるままに店から引きずり出された。 「そんなに慌てるなって。食後直ぐに動き回るのは体に悪いし、映画は逃げん。」 「早く行かないと映画が始まっちゃうかもしれないじゃない。あたしは待つのが嫌いなの。」 「もしかしたらもう始まってるかもしれんだろうが。その場合は早く行っても結局待つことになるんじゃないのか。」 「あーもお!ぐだぐだ言ってないでさっさと行くわよ!」 結局俺の反論も虚しく映画館に急ぎ足で行くことになっちまった。まあどうせ反論しても無駄だってわかってたけどな。やれやれ。 ハルヒがやたらと急かしたおかげで開演にギリギリ間に合った。 まあ開演と言ってもその後まだしばらく映画始まら無い訳で、俺は今二人分飲み物を買ってハルヒのいる席へ向かっている。 「ほら、飲みものだ。」 ハルヒに飲み物を渡しながら俺はハルヒの隣の席に腰を落とした。 「団長に場所取りさせるなんていい根性してるわね、まったく。」 因みに俺達が座っているのは、中央列の一番端だ。ハルヒが端で俺がその隣。 こいつの事だからてっきりど真ん中を取ると思ってたんだが意外だな。 「何か言いたそうね。」 と、ハルヒは訝しそうな表情で俺に問い詰めてきた。 「お前だったらど真ん中の席を取ると思ってたんでな、少し意外だと思ってただけさ。」 隠すことでもないので正直に言ってやった。 「べっ、別に深い意味は無いわ。何となくよ、何となく。」 何故かは知らんがハルヒは動揺してるようだった。まずい事を言ったつもりは無かったんだがな。 「あ、映画が始まった、ほらキョン、せっかく有希がくれたチケット何だからしっかり見る。」 と言って無理やり顔の向きを正面に向けさせられた。たくっ、首を違えたらどうするつもりだ。 映画の内容を簡単に説明すると、高校生から大学生に至るまでの男女が織りなす恋愛物ってやつだ。 俺は小説のほうを読んでたので、やはりと言うべきかあんまり映画を見る気になれなかった。だからハルヒの横顔でも見て暇を潰すことにした。 食い入るように見るの語源はこれだ、というくらいにハルヒは映画に見入っていた。なんせ俺がずっと見てても気づかないくらいだからな。 しかし恋愛感情を精神病の一種といっていたやつが恋愛ものを夢中で見るとはね。 まあそれだけハルヒも普通に馴染んできたってことなんだろうな。良いことだ。 映画を見終わった俺たちはシネマを後にしようとしていた。 しかしそこで、予想だにしなかった声によって俺達は呼び止められた。 「そこにいるのは、ハルにゃんとキョン君じゃないかっ!」 「「つ、鶴屋さんどうしてここに!?」」 また被っちまった! 「はっはっはっ。息がぴったりだねお二人さんっ!」 俺たちが恥ずかしくて悶えていると、 「それよりお姉さんは君たちがどうしてここにいるのかのほうが気になるなあ。もしかしてデートかいっ!?」 鶴屋さんはさらに爆弾発言で追い討ちしてきた。 ハルヒはまださっきのショックから立ち直れてなさそうなので俺が返答することにした。 「ええ…、まあ…そんなところです。」 よほど俺の返答が予想外だったらしく今度は鶴屋さんが驚いていた。 そうだろうな。言った本人も驚いている。 まあ、若い男女が一緒にウインドショッピングしたり、食事したり、映画見たりしたりしたんだから間違いではないと思うが…。 俺が自分の言ったことを後悔し始めていたそのとき、 「おやおや、これは。」 これまた予想外な声が乱入してきた。 見なくても誰だかわかるが一応振り返ってみると、頭からつま先までスタイリッシュなSOS団副団長、古泉一樹がそこにいた。 その後、何だかんだあって俺たち…、俺とハルヒと鶴屋さんと古泉は俺とハルヒが最初に行ったアクセサリーショップの近くの喫茶店に行くことになった。 ハルヒが、 「みくるちゃんがね、駅の近くにお茶が美味しい店があるって言ってたからそこに行きましょ。」 と言い出したからだ。 最初は二人ともせっかくのデートを邪魔するのは悪いといって断っていたが、 「あれはバカキョンが勝手に言っただけなんだから気にしなくていいの。」 とハルヒが言ったのを聞いて、何故か素直じゃない妹を見るような目をしながら喫茶店に行くことを承諾した。 目の前2m先くらいにハルヒと鶴屋さんの北高最強タッグが何やら楽しそうに話しながら歩いている。 そんでもって俺と古泉がそれを追いかける形になっている。せっかくなので隣の何故か両手に紙袋を持っているニヤケ面に聞いてみた。 「お前いつからいたんだ?お前のことだ、どうせ俺らに声をかける前からいたんだろ。」 「おや。ばれてましたか。」 やっぱりか。 「たしかに、『つ、鶴屋さんどうしてここに!?』というあたりからいました。」 最初っからじゃねえか。 俺は盛大に溜息をついてからついでとばかりにもう一つ質問した。 「お前と鶴屋さんはどうしてシネマにいたんだ?あとおまえのその荷物はどうしたんだ。」 「それは見てのとうりです。」 古泉は微笑みながら続けた、 「鶴屋さんと買い物に行ったあと映画をあそこで見ていたんですよ。これはそのとき鶴屋さんが買ったものです。」 まあそうだよな。見りゃわかる。 「鶴屋さんにこの前の御礼をしたいと言ったら、買い物につきって欲しいと言われましてね。映画はおまけです。」 「御礼って、この前の転校騒ぎのときのか。」 「ええ。彼女のおかげで今もこうしてここにいられる訳ですから、感謝してもしきれないですね。」 そう冒頭で述べた古泉の転校騒ぎは、実は鶴屋さんに協力してもらって何とかなったのである。 だから買い物の件は納得したが、古泉曰くおまけの映画の件は怪しい。ひょっとしてつけてたんじゃないだろうな。 そんな考えが顔に出てたのか、 「シネマで貴方達に会ったのは偶然です。安心してください。」 と俺を安心させるような笑顔で言った。ただ多少笑顔に苦笑が混じっていた気がするが。 その後、俺達は喫茶店で朝比奈さんが美味しいと言っていたお茶(朝比奈さんが美味しいといってるだけにかなり美味かった。 もっとも朝比奈さんが淹れるお茶に勝てるお茶なんてこの世に存在しないがな)を飲みながら他愛も無い会話を子一時間ほどしていたんだが、 ちょっと前にハルヒと鶴屋さんが席を立ったので、今席には男二人が隣り合って座っているだけである。 仕方が無いので古泉と二人で言葉のキャッチボールをしていると、鶴屋さんだけが帰ってきた、 「ハルにゃんはもうちょいかかるってっ。」 何故か楽しそうな顔をしながら。まあこのお方はいつも楽しそうにしていらっしゃるが何か違う。 「そうですか。」 とりあえず無難に返しておく。 「さてと。あたし達はそろそろ帰るねっ。お邪魔物はたいさーん!」 そう言うやいなや、鶴屋さんは古泉の手とレシートを取ってあっという間にいなくなってしまった。 手を取られて引っ張られていった古泉は苦笑していたが、まんざらでもないようだった。 何でわかるかって? 古泉が鶴屋さんの手を握り返していたからさ。 しかしハルヒのやつ遅いな。化粧直しでもしてるんだろうか。 「あれ。古泉君と鶴屋さんは?」 「用事が有るらしく先に帰っちまった。後、料金は鶴屋さん達が払って行った。」 「そう。それじゃああたし達も帰りましょうか。」 帰りの電車の中、ハルヒはよほど疲れたのか俺の肩に頭を乗せ寝てしまった。 周りの視線が少し痛いが20分ちょいの辛抱だ、まあいいか。 俺の方はハルヒの寝顔見ながら北高に入学してからの1年余りを振り返っていた。 「こいつが笑うようになってもう1年か…。」 あと二駅で到着だな。そろそろハルヒを起こすか。 「ハルヒ、起きろ。もうすぐ着くぞ。」 今は電車から降りて駅前である。 「これ…。」 と言いながらハルヒが俺に渡したのは、朝、俺がハルヒに買ってやったイルカのアクセサリーだ。 しかしこれは俺が買ったものではない。何故なら俺が買ってやったやつは昼飯のときにハルヒがさっさと自分の携帯につけちまったからな。おそらく、さっきトイレに行くフリをして買ってきたんだろう。道理で長かったわけだ。 「あたしは借りは返さないと気が済まないの!」 「だからって、同じ物もう一つ買わなくてもだな。それじゃあ意味が無いだろ。」 てか、高くて予算オーバーじゃなかったのか? 「いいの、こういうのは気持ちが大事なの。」 ハルヒは訳のわからないことを言い出した。だが何故か悪い気はしなかった。 「そうかい。それじゃあ遠慮なく貰うぞ。」 そう言ってイルカのアクセサリーを受け取ると、ハルヒは100万Wの笑みを浮かべ、 「よろしい。それじゃあ早速付けなさい。団長命令!」 と言った。もちろんいつものポーズで。 俺がイルカのアクセサリーを携帯に付けていると、 「キョン!あんた今日はあたしを家に送りなさい!」 と言う団長様のありがたい言葉をいただいた。やれやれ。 まあ、ここまで来たら最期まで着きやってやるか。 「わかったよ。」 「なあ、ハルヒ。」 「なによ」 「今日は楽しかったか?」 ハルヒは一瞬きょとんとしてから、 「まあまあね。あんたにしては良くやったんじゃない。」 笑顔でそう言った。 「そりゃ良かった。」 これは俺の本心だ。 今日の普通のデートをまあまあ楽しいと思ったなら、こいつも普通の楽しみ方が少しは身についてきたってことだからな。 それに、何故だか知らんが俺はこいつが楽しんでいると自分まで楽しくなるらしい。 その根本には俺にも良くわからない、心にもやが掛かったような気持ちがあるように思う。 しかし、その心にもやが掛かったような気持は、何故か悪いように感じない。 むしろ心地よくさえ思う。だから俺は………。 「ハルヒ。」 「今度は何。」 「また二人でどこかに行かないか?」 Fin 関連作品:買い物日和
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【嫉妬】 <1年生> ●プレジャー・ドッド(赤ずきん) ●ヘンゼント=ビュー/グレイン=ビュー(ヘンゼルとグレーテル) ●蛇之目(左甚五郎の忘れ傘) ●コゼット・ブルーハース(レ・ミゼラブル) <2年生> <3年生> ●エオルド・ドレイク(英雄譚ベオウルフ) ●アコナイト・モンクスフード(ギリシャ神話) <教師> ●ブリュンヒルデ(北欧神話) ●メガイラ・エリニース(ギリシャ神話)